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2009年4月 6日 (月)

桜の花に寄せて

山陰の実家のすぐ近くには古い川が流れ、見事な桜土手がありました。
「車椅子を借りて、桜を見に行こうか?」
たまに帰省したおりに誘ってみても、父は首を横に振ります。
「花びらが庭に舞い落ちて来るから、桜が満開なのがわかる」
そう父が言うので、小さな小さな坪庭に目をやると、淡い淡いうす桃色の桜の花びらが金魚鉢の水面や、コケの上にちらほら。

父は、人の手を借りてまで歩行を助けてもらったり、何より近所の人の同情をかったりするのが嫌らしく、いくら誘っても、昔の男の人らしい頑固さで、外出を拒んでいました。
はなやかな桜を愛でる人々の中に入っていく気にならない心境は、足が不自由になった父の身にならないとわからないのだろうなと、満開の桜の下に連れて行ってやりたい気持ちも、私達きょうだいは、十数年あきらめていたのです。

子供達から遠い実家で、老いた両親が二人助け合って暮らすのは限界だと、両親を諭し、末娘の私の近くのここ湖西に越してきたのは6年前でした。
父は87歳になってしまっていました。
安心したのか、自然豊かなこの湖西の地に来たことが幸いしたのか、強引に介護保険をフル活用させて大勢の方々のお世話になりながら、二人とも見違えるほど元気になりました。

マンションの部屋の父のベッドからは、比良の山並みと琵琶湖が見えて、窓の下には大きな桜の木があって、巡って春が来ると、眼下の桜はそれはそれは美しく、父のうれしそうな顔を見たとき、
「ああ、おもいきって引っ越してきてよかったな~」と母と笑顔を交わしたものでした。

きらめく琵琶湖の朝陽、新緑の湖畔、虹のかかる秋雨の山並み、錦織り成す晩秋、山陰のように雪に包まれる白い冬。
晩年を、二人仲良く助け合いながら、移りゆく四季の中で過ごすことができました。
そんな環境に老いた両親を置いてやれた、ただそれだけが、私にできた親孝行だったように思います。

それでも、二人とも寄る年波には勝てず、だんだん弱り、ホームへ移って2年。
年末から体調が懸念されていた父は、お正月が明けて呼吸困難になり、病院に運ばれてちょうど一ヶ月で、穏やかに息を引きとりました。。

時間の許す限り、母を病院に連れて行って面会させてやりました。
とても仲の良い夫婦で、93歳と、90歳のしわだらけの手と手を握り合い、呼びかける母の声を聞くと、父はとても穏やかな表情になるのです。
兄嫁が思わず、「こんな夫婦にならなあかんな~」と言いました。
「ほんまやな~」 

まだ雪のちらつく頃、花屋さんで、冬に咲く”啓翁桜”の一枝を見つけ、病院のベットの父に見せてやると、かすかに開いた瞼のむこうにキラッと瞳が輝いて、軽くうなずいてくれました。
最後の桜だったよね。

先月の末、四十九日の法要をすませました。
寒さが長引いた今年の春は、この日に合わせた様にやっとソメイヨシノが数輪咲きました。

ここ湖西は、今やっと、五分咲きの桜です。
おじいちゃん、今年は空の上から見てるかな~?

親を亡くすというやるせない喪失感を、初めて味わった冬も終わりました。

今朝の里山の桜です。
0904060027

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コメント

pencilとなりのとまとさんへ
とまとさん、すっかりご無沙汰しているのに、暖かいコメントありがとう。
お母さんはお元気でしょうか?
今は、残された母に少しでも楽しい時間を作ってやりたいと思っています。
そのことを父も一番気にしていただろうし、この年齢まで二人揃って生きてきたのも、お互いのためと、がんばってきたからだと思います。
孝行と言えるかどうかは、自信がないな~

投稿: ネモフィラブルー | 2009年4月18日 (土) 10時51分

こんにちは
お父様をお見送りされて、淋しい冬がおわりましたね。
桜やネモフィラたちが慰めてくれていますか?
穏やかなお顔で逝かれたお父様は、お幸せだったとおもいます。
親孝行できましたね。

投稿: となりのとまと | 2009年4月18日 (土) 09時35分

pencilhiroさんへ
ご無沙汰ばかりなのに、コメントありがとうございます。
さっき、hiroさんのところで、ネモフィラを見てたんですよ。
同じ頃にお互いのところに行ってたようですね。
どんな形の孝行ができたのか、いまでもよくわかりませんが、どんなやり方でも、後悔はあるのでしょう。
残された母の事、姑の事まだまだこれからいろいろありますが、それは、hiroさんも同じですね。
お互い楽しいこといっぱい見つけて、元気な
日々を送りましょうね。

投稿: ネモフィラブルー | 2009年4月15日 (水) 12時25分

ネモフィラブルーさん、こんにちは♪
おひさしぶりです。
我が家のネモフィラも満開になり
ネモフィラさんのことを思い出していました。
↓素敵なお花を見せていただいたり
お父様をお見送りされたことなど読ませて
いただき深く心にしみました。
ネモフィラさんは本当によくなさいましたね。
晩年をこのような美しい自然の中で過ごされ
、優しいネモフィラさんに支えられて、お父様も
本当に幸せな人生を送られたと思います。

投稿: hiro | 2009年4月15日 (水) 11時06分

pencilぴぴさんへ
長らくご無沙汰いたしました。
長年の覚悟のうえでも、いざそうなると親が亡くなることは、淋しいものです。
自分はどんな最期をむかえるのかな?と思ったりしますね。
長寿が当たり前となり、私達も老後をいかに元気に過ごすかが大切ですね。
お互い楽しいこといっぱいして、元気でいましょうね。

投稿: ネモフィラブルー | 2009年4月15日 (水) 09時38分

お久しぶりです。
沢山色々な事がありましたね。
気を落とさず過ごしてくださいね。
自分も老いていく・・・果たして子供達は。
ネモフィラブルーさんの様に素敵な家族に看取られ幸せなお父さんですね。

投稿: ぴぴ | 2009年4月13日 (月) 16時45分

pencilchiyomiさんへ
すっかりご無沙汰していますが、お元気ですか?
あの寒い日々をchiyomiさんも心騒がせながら過ごしていたのですね。
今年の冬は長かったですね。
お母さん、快復されてよかった。
年とともにいろんな体調不良なことも出てくるけど、苦しい、辛い思いだけは避けてやりたいと思っていました。
きっと、chiyomiさんも同じでしょう。
高齢なので覚悟はずいぶん前からできていたけど、いざとなるともっと生きていて欲しいと思いました。
お元気なうちに、どうぞ親孝行してあげてくださいね。
先日は、残された母二人と彦根の桜を眺めましたよ。
chiyomiさん、これからだよ私達。
あきのさんやossさんをお手本にがんばろうね。


pencil咲子さんへ
すっかりご無沙汰なのに、コメントありがとうございます。
今年の冬は長かったので、サザンかも椿もいつまでもきれいでしたね。
やっと桜の季節を迎え、庭もにぎやかになってきました。
父は夫婦仲良く、長寿をまっとうしましたので、とても幸せだったと言えるでしょう。
残された母もあとの人生を穏やかに過ごしてくれればと思っています。
やってあげたいことはたくさんあったけど、結局は、何も出来ないものですね。
春たけなわ。花たちの元気さに負けないよう、お互い元気な日々を過ごしましょうね。


pencilムムムさんへ
すっかりご無沙汰してしまいました。
このところの暖かさで、やっと春らしい庭になってきました。
しばらく忙しかったせいで、庭も畑も悲惨な状態でしたが、なんとか咲きそろった花でごまかされています。
葉牡丹は不思議なくらい大きくならず、今もずっとこの状態で、きれいなんですよ。
来年は、2色にして花壇に植えてもいいのでは?と思っています。
亡くなってはじめて、父に多くのことを学んでいたことに気づかされたような気がしています。
亡くなって初めて気づくんじゃー、お礼も言えませんね。
ムムムさんの"Myガーデン”春を迎えてどんな仕上がりでしょう。
楽しみです。


pencilマウンチョ!!さんへ
すっかりご無沙汰してしまいました。
コメントありがとうございます。
チョコちゃんもお元気でしょうか?
父は、穏やかに長寿をまっとうしてくれました。
誰もがいろんな形で迎える老後。
人にあまり迷惑をかけないよう、穏やかに過ごせたらいいですよね。
なんだか、今年はあちこちでネモフィラを蒔かれているようで、楽しみです。
やっとこのところの暖かさで、うちのネモフィラもどんどん咲いてきましたよ。
やっぱり、春は心躍りますね。

投稿: ネモフィラブルー | 2009年4月13日 (月) 12時28分

お父さん亡くなられたんやね。49日もすんだったんやね。
穏やかに見送ることができ、よかったですね。
私の母もブルーさんのお父さんと同じ時期(12日の深夜)救急車で搬送されました。おかげさまですぐ退院することができましたが心臓弁膜症があり、もう少し若かったら手術を勧めると言われていました。1月の月は寒かったものね。夜中に車で走っていると道路わきの温度計がー4度とかになっていて…ブルーさん無事でよかったです。
実家の裏にも川沿いに桜並木があるのですよ。もうそろそろ散り始めました。
さくらの花が咲き始めると、お父さんを思いそうですね。
まだまだ元気でいましょうね。

投稿: chiyomi | 2009年4月12日 (日) 12時11分

今日は
お帰りなさい・・きっと何か有って
書けないと思っていましたが
お父様の事でしたか・・でも心行くまで
優しい気持ちで側にいて上げる事が出来て
良かったですネ、満開の桜より散り行く美しい光景を
親子で見る楽しみが良かったのでしょうね・・
どんなにして差し上げても親子の別れの淋しさは
当分消えません。でも
どうか元気を出して又お花のお話など致しましょう。
その方が天国のお父様もきっと見ておられて喜ばれると思いますョ・・
そして早く元気に成って下さいネ

投稿: 咲子 | 2009年4月11日 (土) 16時42分

ネモフィラブルーさん、お帰りなさい。
また「ネモフィラブルーさん」と書き込めることをとても嬉しく思います。
湖西ちかくに思い切ってきてもらって、最後まで過ごされたということが、時間の経過とともに、きっとブルーさんの喪失感を少しずつであっても癒していってくれるものと信じています。
ブルーさんの庭ではたくさんの花たちがブルーさんといつも一緒ですね。
葉牡丹、私よりずっと成績グッドですよ。
ブルーさんのご両親、90代までずっと仲良しでご一緒でよかったとつくづく感じます。

投稿: ムムム | 2009年4月 8日 (水) 22時41分

お久しぶりです。
今年は我が家も ネモフィラの種をまき、今綺麗に咲いています。
悲しいお別れがあったのですね・・・。
その時になってみないと、どう親孝行できるかわかりませんが、
みんな必ずその時はやってくるのですよね。

空から 満開の桜をお父さんもごらんになっていますよね。^^*

投稿: マウンチョ!! | 2009年4月 8日 (水) 15時07分

pencilHappyばあばさんへ
ご無沙汰ばかりなのに、コメントありがとうございます。
父は、長寿をまっとうしましたので、幸いな人生だったと思います。
ああしたい、こうして欲しいと望むことが無い人だったので、とても学ぶことが多かったように思います。
ばあばさん、私達のこれからも、健康で楽しいものにしたいですね。

pencil吾亦紅さんへ
ご無沙汰ばかりで申し訳ありません。
ご訪問いただきありがとうございます。
そちらは、ここ湖西より暖かいので、春の青い花でいっぱいでしょうね。
ここ数年、いつも冬は心寒い想いをしてきましたが、春は必ずやってきて、心も溶けてゆきます。
暖かいのは、やっぱりいいですね~。

pencilポエポエさんへ
ご無沙汰ばかりなのに、訪問いただきありがとうございます。
亡くなると、ああしてやればよかった、こうしてやればよかったと色々思いますが、どうやっても、悔いは残るのだと思います。
夫婦でこの年齢まで仲良く過ごせたのは、なによりの幸せといえるでしょう。
ポエポエさんの広い庭は春を迎えて、にぎやかなことでしょうね。
ラッキーちゃんにも、また会いに行きますのでよろしく。

pencil日向夏さんへ
ご無沙汰いたしました。
日向夏さんが思われるように、父も感じてくれていたのなら幸いです。
そちらは暖かいので、花盛りでしょうね。
ネモフィラもたくさん咲いているでしょう。
また、見せてもらいにいきますね。

pencilmicoさんへ
何が親にとって孝行なのかは、いまだによくわかりませんが、出来ることをするだけしかありませんでした。
夫婦仲よく、長寿をむかえたことが、なによりでした。
いつも、コメントいただきありがとうございます。
お互い、里山を歩いて、足腰丈夫な老後を迎えましょうね。

投稿: ネモフィラブルー | 2009年4月 8日 (水) 10時02分

ネモフィラブルーさんおはようございます。
お父さまのお幸せそうな最期が、ブルーさんの穏やかな語り口でようくわかりました。
(ブルーさんの心中は必ずしもそうではないでしょうけれど・・・)
お母様もお寂しいでしょうがまだまだお元気で居ていただきたいですね。
私たちもご両親のようにならなくては・・と
改めて思いました。
私の父も桜満開の中旅立ちましたのでこの時期になるといろいろ思い出します。
庭に咲き誇っている花たちに癒されながら、元気を取り戻してくださいね。

投稿: Happyばあば | 2009年4月 8日 (水) 08時14分

ネモフィラブルーさん今晩は~~
更新が無いのでもしやと、思っておりました
が、お元気になられて何よりです、本当に花は後押しをしてくれますね~~土いじりは心が落ち着きますね、お父様も天寿をまっとうされ、穏やかに逝かれたのですね~~
そう有りたいです、嫁いで婚家の両親、自分の両親と見送りましたが、四十九日がすんだ頃が吾に還り寂しかったのを思い出します
元気で花と遊びましょうね~~上手く慰めの
言葉も見つかりませんが、元気を出してくださいね。

投稿: 吾亦紅 | 2009年4月 6日 (月) 23時35分

ネモフィラブルーさん、お帰りなさい。そして、オツカレサマでした。
いっぱい親孝行ができて、よかったですね。
私は心に思うことはたくさんあるのだけれど、文章に書こうとすると、うまく伝える事が出来なくて、とてももどかしい気持ちです。
ネモフィラブルーさんやご家族の優しい暖かな気持ちに包まれて、きっとお父様も嬉しかったことと思います。桜の花は、お父様との思い出の花になりましたね~。

投稿: ポエポエ | 2009年4月 6日 (月) 23時25分

 琵琶湖の見える素晴らしい所に来れた事は非常に良かったと思います。年老いてしまったら頼る人がいることが一番の安心なのでしょう、私はまだこんな経験はないですが、何となく理解できるような気がします。人間いずれ年老いてしまうのですから。きっとネモフィラブルーさんが心の支えになったことでしょう。

投稿: 日向夏 | 2009年4月 6日 (月) 23時07分

桜の季節は色炉思い出すことが多いですね、
親孝行できた満足感、羨ましいです、
「親孝行したい時には親はなし」とか
孝行らしいことは何しないまま逝ってしまいました。

投稿: mico | 2009年4月 6日 (月) 19時44分

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