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2008年4月 1日 (火)

老いをみつめて④(回復)

睡眠剤の力をまだ借りなければ眠れなかったが、睡眠時間は少しずつ増えて、夜だけはぐっすり眠れるようになった。
抗うつ剤は、1ヶ月以上経たないと効果が見えないと言われていた。
心の病はまず眠れるようになることが大切だ。眠ることで、ゆっくり脳を休める。
眠れるようになったことで、私は希望を見出していたが、別の症状が現れ始めた。

体が少し動けるようになって、自分で動き始めると、転んで筋肉を痛め、また動けなくなった。
トイレ、食事の補助はもちろん、布団を掛けて、布団をめくって、水を取って、手を握って、などいろんな理由で、私を呼ぶ。
なんの理由もないときもあり、その回数は頻繁になって、ひどいときは10分毎になった。
夫がいる時は、夫も呼ばれる。
夫はとうとう音をあげ、休日は里山へ逃げた(コラコラ!)
数回に一回は、呼ばれても無視したり、病なのにと解りつつ義母を叱ったりして、私自身落ち込んだりもした。

デイケアやショートステイに預けられたら、少し私も休めるが、うつ症状があるので、人の中に急に連れ出すのは無理だった。
それでも少しづつ、また歩けるようになったり、昼間も少し眠るようになったり、以前からおやつを一切食べなかったのに美味しいと言って食べ始めたりと、前に進んでいた。

うつ症状に隠れていた認知症が見えてきたのは、抗うつ剤を飲み始めてからやはり一ヶ月半。
そのころになると、はっきりと正常な時間と、うつろな目をした別人のような時間が表れるようになった。
二重人格のように見えた。
正常な時は以前のように穏やかでやさしく、別人の時は何を言っても無駄で、うろうろと部屋を行ったり来たり落ち着かない。
トイレに行ったあと、またすぐ行ったり、食事の2時間後くらいに「きょうはまだ食べてないな~」と言ったり、時間に関する記憶が混乱し始めた。
その反面、穏やかな時間は日ごとに増えていった。

夜寝かせて布団を掛けると、「ありがとう」と言ってくれるようになって、もういいんじゃないかと、睡眠剤を半分に減らし、とうとう止めさせることに成功。
知らぬ間に夜は勝手に眠れるようになった。

食欲が増えたり、眠れるようになったり、寒がらないようになったり、体が自分で動かせるようになったりするたびに、
私が「おばあちゃん、こんなに良くなったな~」と言うと、
いつも「そうか?」と沈んだ声で答えていた。
私は、「おばあちゃん、”そうだな~”って言わなあかんよ」

ある日、答えて義母は、
   「そうだ、そうだ ♪
     そうだむらの そんちょうさんが♪
          ソーダのんで しんだそうだ♪」 
と歌った。

二人で顔を見合わせて、久しぶり笑った。
元気な頃の明るい義母の笑顔があった。


参考                               

 そうだ村の村長さん                     クリスマスローズ(フェチダス)                           
         阪田 寛夫                          
0501150005_2 そうだむらの そんちょうさんが
ソーダのんで しんだそうだと
みんながいうのはウッソーだって
そんちょうさんが のんだソーダは
クリームソーダのソーダだそうだ
おかわり十かいしたそうだ
なかでおよげばなおうまそうだ
クリームソーダのプールはどうだと
みんなとそうだんはじめたそうだ
そうだむらではおおそうどう
プールはつめたい ぶっそうだ
ふろにかぎるときまったそうだ
そうだよタンサンクリームおんせん
あったかそうだ あまそうだ
おとなもこどもも くうそうだけで
とろけるゆめみてねたそうだ

 「しゃべる詩あそぶ詩きこえる詩」より 

   この記事は続くので、コメント欄は最終回に設けます。

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